心で弾き、心に響く音楽を
~第22回宮崎国際音楽祭を前に~
宮崎国際音楽祭総監督佐藤寿美
暮れに徳永二男さんと演奏家の現役年齢といった話でやりとりする機会がありました。演奏する楽器の違いや体力の個人差があるだろうとは思いつつ、私が「ご自身は何歳くらいまで舞台で演奏できるとお考えですか?」と尋ねると、徳永さんの答えは意外なものでした。「バイオリンは指や腕で弾くだけじゃなく、心で弾くものだから・・・」と話され、ご自分の胸に手を当てられました。「心で弾く」という言葉の重みに圧倒されて私は黙ってしまいましたが、徳永さんは柔らかな微笑を浮かべておられます。いつの間にか私は胸のうちで「心で弾く、心に響く音楽」という言葉を反すうしていました。
というわけで今年22回目の音楽祭も徳永二男さんとあれこれ知恵を出し合いながら準備を進めています。2年ぶりにやってくるマイスキーさんは8人のチェリストで奏でるチェロ・アンサンブルを。そして昨年ウィーン・フィルのコンサートマスターを退かれたキュッヒルさんは「魅惑のウインナ・ワルツ」を始め室内楽の精髄を。さらにズーカーマンさんと音楽祭管弦楽団はベートーベンの5番「運命」に挑戦します。音楽祭で「運命」が演奏されるのは初めてのことですし、あわせて演奏される「バイオリン協奏曲」とともにベートーベンの真髄に触れるものになるかと思っています。この「ベートーベン企画」は期間中に熊本に出向いて地震から1年の復興支援コンサートでも御披露する予定です。音楽祭のトリを務めるオペラはヴェルディーの「椿姫」で、今年もまた狂おしい愛の物語をたっぷり楽しんでいただきます。
昨年からスタートした「Oh!My!クラシック」は、「国谷裕子にクローズアップ!」と題して長年TVキャスターを務められた国谷さんのとっておきのお話と演奏を。「ポップス・オーケストラ in 宮崎」は作曲家の宮川彬良さんが、皆さまに驚きと感動をお伝えするコンサートをと、現在、張り切って企画制作中です。また、「500円コンサートの日」は、今年も劇場の3つのホールを使って7つのコンサートを、いずれもワンコインでお楽しみいただくべく準備中です。
徳永さんはご自身だけでなく音楽祭管弦楽団の演奏家の方たちにも、「心で弾く」音楽を繰り返し伝えてこられています。海外からやって来る演奏家たちが口をそろえて高く評価する楽団の根っこにあるものでしょうか。「心で弾き」そして皆さまの「心に響く」音楽祭をと頑張って参ります。御支援、応援をよろしくお願いいたします。